「谷川俊太郎の33の質問」(ちくま文庫)=前回からつづき=
16.きらいな諺をひとつあげて下さい。
“A rolling stone gathers no moss.” 転がる石にコケはつかない。意味合いはどうとも取れるが、落ち着きのない者は大成しないという意味なら、それは違うと思う。そういえば、君が代の結びの部分は「苔のむすまで」だった。
17.あなたにとって理想的な朝の様子を描写してみて下さい。
初夏の早朝。乳白色の霧がかった草原を、横切っていく。うっすらと朝焼け。暗い森の向こう側にはかすかな水音。きっと川が流れているに違いない。あくまで、ゆっくりと緩慢に太陽が昇ってくる。川に着いたら一休みしよう。
18.一脚の椅子があります。どんな椅子を想像しますか?(形、材質、色、置かれた場所など)
バーカウンターに置かれたスツール。金属製で黒く塗られていて、ありふれたビニール張りだ。もうすぐ看板の時間、店内にはブレヒトの「アラバマ・ソング」が流れている。次のウイスキー・バーがどうしても見つからない!

19.目的地を決めずに旅に出るとしたら、東西南北、どちらの方角に向かいそうですか?
断然、北。漠然と、そこへ向かえば世界の果てがあると。そう思って出かけたら、自衛隊のレーダー基地があって立ち入り禁止だったでござる…orz
20.子どもの頃から今までずっと身近に持っているものがあったらあげて下さい。
たくさんある。矯正視力1.0の眼。首をぐるぐる回す癖。蜘蛛みたいな人より少し長い指。屈託を抱えた心。生と死への畏敬。
21.素足で歩くとしたら、以下のどの上がもっとも快いと思いますか? 大理石、牧草地、毛皮、木の床、ぬかるみ、畳、砂浜。
畳。足の裏の感覚だけで言うなら、最も気持ちいいと思う。
22.あなたが一番犯しやすそうな罪は?
著作権法違反。水も空気も音楽も、本当に大切なものはタダであるべき。
23.もし人を殺すとしたら、どんな手段を選びますか?
もちろん素手で、こちらが殺されるかもしれないという恐怖と戦いながら。ハンデなし、一対一のストリート・ファイトだ。殺す相手のメンタリティーに触れたい。訳も分からず、道端のアリを踏み潰すようなことはしたくないんだ。例えるなら拝一刀かな。出来っこないけれど。
=つづく=